談話会のご案内


これまでの談話会
第85回: 2023 年 12 月 6 日(水) 17:30--
  • 場所:芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 土屋 卓也 氏(大阪大学)
  • 講演題目:楕円型方程式の境界値問題に対するアダマール変分について
  • 講演概要:楕円型方程式の境界値問題が、ある領域で定義されている状況を考える。 このとき、領域が摂動を受けると、方程式により定まる様々な量(例えば境界値 問題のグリーン関数、固有値など)も変動する。そのような領域の摂動に関する 変分を、アダマール変分という。 講演者(土屋)は、大阪大学の鈴木貴教授とともに、様々なアダマール変分の計 算を行ってきた。この講演では、
    1. ディリクレ/ノイマン境界条件の元でのラプラシアンのポアソン問題のグリー ン 関数のアダマール変分
    2. ラプラシアンの固有値のアダマール変分 -- 領域摂動に関する固有値の連続 性と 微分可能性
    などについて、我々の研究の結果を紹介する。
 
第84回: 2023 年 7 月 14 日(金) 17:30--
  • 場所:芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 木村 元 氏(芝浦工業大学)
  • 講演題目:ベルの定理の考察と応用
    前半:入門的解説と量子情報科学への応用
    後半:ベルの定理の含意と最新の進展,そして,関連する数学の問題
  • 講演概要:本セミナーは二部構成とし,前半にベルの定理の入門的解説と量子情報科学への応用,後半にベル定理の深堀りした考察と最新の進展,また,関連する数学の問題について紹介する*1).
    2022年ノーベル物理学賞は「ベルの不等式とその破れの実験検証」に対して授与された. ベルの定理とは,我々の常識的な世界観をがらりと変えた大発見であり,「科学史上最も深淵な結果」と評されることもある. その内容を簡単に説明すると『この世界は「実在性」と「局所性」が両立できない』*2) というものである. ここで「実在性」とは ---- かつてアインシュタインが「月は見ていないときにも存在する」と語ったように --- 「(物の性質などの)存在は観測行為とは独立である」という常識的な考え方である. 他方「局所性」とは「遠くの物理的影響は瞬時に伝わらない」という性質である.これは一見地味な性質と思われるかもしれないが,我々人類が極めて局所的な存在である(広大な宇宙の点のような領域に住んでいる!)ことを考えると, 局所性が成り立たない世界では,人類が秩序や法則を理解することすら難しくなってしまう.そのため「局所性」は,自然科学の成り立ちにとって極めて重要な性質なのである. 1964年,ベルは(そんな常識的な考えの)「実在性」と(科学にとって重要な)「局所性」が両立しないことを看破したのである.
    ここまで読むと,まるで哲学の話に聞こえるかもしれないが,これは現代物理学(量子論)が向き合っている深刻なテーマであり,実験検証可能な科学となっている. さらには,この不思議な性質は,量子コンピュータや量子暗号などの量子情報科学の根幹を支える性質ともなっている.
    ところが,ベル定理の仮定や真の含意は必ずしも明確でなく,未だに論争となることもある.実際,この問題は,仮定の非一意性や緩和や,哲学的概念の明確な数学言語化が曖昧(そして非自明!)であることに起因する. 講演の後半ではそのあたりの(ややマニアックな)議論から,量子情報科学への応用,ベル定理の拡張(我々の最近の研究),また,関連する数学についても紹介する予定である.
    *1) 事前知識としては初等的な確率・統計くらいで,特に量子論(量子力学)や関数解析などの知識は必要ない.ただし,どうしても概念的な話をするため,数学の方にはかえって曖昧ですっきりしない可能性のあることをご了承ください….
    *2) ベル定理の背後にある仮定は曖昧な点も多いので,本当は実在性と局所性だけでは語ることができない.例えば,暗黙裡に「自由意志の存在」なども仮定されている.
    参考文献:
    [1] J. Bell and A. Aspect, "Speakable and Unspeakable in Quantum Mechanics" (Cambridge University Press, 2004).
    [2] 量子力学に現れる非局所性の意味, 木村元 (数理科学, 2014年12月号): 数理科学さんの許可をとって下記で公開してます. https://qsys.se.shibaura-it.ac.jp/kimura/BellTheorem_GK.pdf
    [3] 量子の不可解な偶然 ー非局所性の本質と量子情報科学への応用ー, N. ジザン(著),木村元,筒井泉(訳)(共立出版,2022).
    [4] M. Hall, Phys. Rev. A, 82, 062117 (2010); M. Hall, Phys. Rev. A, 84, 022102 (2011).
    [5] G. K., Y. Susuki, K. Morisue, arXiv:2206.06196; R. Takakura, K. Morisue, I. Watanabe, G. K., arXiv:2208.13634.
 
第83回: 2023 年 5 月 12 日(金) 17:30--
  • 場所:芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: Siegfried M. Rump (Hamburg University of Technology)
  • 講演題目:Accurate floating-point computations
  • 講演概要:Recently, although a very old subject, there was quite some progress in error estimates of floating-point operations. We discuss some details, starting with some tutorial intended for young researchers, trying in particular to give some encouragement for research. Following details of a new pair arithmetic are presented provably achieving accurate, i.e., faithfully rounded results for arbitrary arithmetic expressions. The 78-page seminal paper by John v. Neumann and H. Goldstine on the accuracy of the numerical solution of linear systems concludes that in single precision from dimension 15 no correct digit of the approximate solution can be expected. That paper is most well-known in numerical analysis. We show that detailed understanding of floating-point operations reveals that mathematical correct bounds for the maximal error of the approximation are obtained for several thousand unknowns.
 
第82回: 2022 年 7 月 22 日(金) 17:15--
  • 場所:芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 5241教室
  • 講演者: 大矢 浩徳 氏(芝浦工業大学システム理工学部数理科学科)
  • 講演題目:様々な型の量子Grothendieck環の間の同型とその応用
  • 講演概要:本講演では,講演者の研究対象である量子ループ代数の有限次元表現論について, 未解決問題の紹介を含めた解説を行う. 量子ループ代数の有限次元既約表現の重要な不変量として,q-指標と呼ばれる ものがある.これはLie群・Lie環の表現論における指標の類似であるが,一般 に量子ループ代数の有限次元既約表現のq-指標を求めることは容易ではない. これを求めるためのアプローチとして,量子ループ代数の有限次元表現圏の Grothendieck環を非可換変形した量子Grothendieck環を用いるものがある. 本講演では,様々な型の量子ループ代数に対応する量子Grothendieck環らの間 に非自明な同型が存在するという我々の結果を紹介し,それが既約表現のq-指標 を求める問題にどのように応用されるかということについて解説を行う. 本講演の内容は藤田遼氏, David Hernandez氏, Se-jin Oh氏との共同研究に 基づいている.
 
第81回: 2022 年 6 月 27 日(月) 17:00--
  • 場所:芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 5241教室
  • 講演者: 前澤俊一氏(東京理科大学理学部助教)
  • 講演題目:グラフのlinkage problemと連結度
  • 講演概要:ネットワーク上ではいくつもの頂点間(ノード間)で情報のやり取りが行われている. そういったやり取りの中で,ある情報の伝達経路が他の伝達経路と交わらないことが望ましいことがありうる.例えば,インターネット上で機密性が高い情報をやり取りする際などが考えられる. こうした問題をグラフ理論のk-linked という概念の問題に翻訳し,解決しようという試みがなされている.もう少し形式的に述べると指定されたいくつかの頂点対を互いに頂点を共有しない道で結べるかという問題が考えられている. 特に連結度と呼ばれるグラフの不変量との関係性に着目されている.本講演では,k-linkedと連結度に関するこれまでの研究の流れやそれに関する講演者の結果を紹介する.
 
第80回: 2020 年 1 月 10 日(金) 17:00--
  • 場所:芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 5241教室
  • 講演者: 安藤正英氏(株式会社ムスカ 取締役COO)
  • 講演題目:大企業からスタートアップ への転身の思考〜総合商社で1千億円事業の中核を担う40代社員が、なぜ昆虫事業スタートアップ の経営を選んだか?
 
第79回: 2019 年 11 月 22 日(金) 17:00--
  • 場所:芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: Kai T. Ohlhus 氏 (Tokyo Woman's Christian University)
  • 講演題目:Scientific programming with GNU Octave
  • 講演概要: GNU Octave is a numerical computing environment and a high-level programming language. It provides a convenient interface for solving linear and nonlinear problems, and for performing other numerical experiments. The language is mostly compatible with MATLAB. Besides 2D and 3D plotting capabilities, Octave provides an integrated development environment for editing, debugging, and profiling numerical algorithms. Octave can be freely obtained, modified, and redistributed under the terms of the GPL, the free and open source software license.
    This talk gives a brief overview about the usage of Octave and how to implement numerical algorithms using the Octave language. The external code interface for C/C++ and Fortran is introduced, which enables to easily use, test, and compare well-known software libraries using a common high-level interface. Finally the basics how to build custom versions of Octave are shown and how to interact with the development community.
    当日のスライドはこちらにあります.
 
第78回: 2019 年 9 月 26 日(木) 16:00--
  • 場所:芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 小境 雄太 氏 (芝浦工業大学建築学部)
  • 講演題目:ブラウアー樹木多元環の導来同値について
  • 講演概要: 二つの多元環が導来同値であるとは、それらの導来圏が三角圏として同値なときをいう。導来同値は多元環の類似性の一つとして、近年盛んに研究されている。
     一方で、ブラウアー樹木多元環は、巡回不足群をもつ有限群のブロックなどで実現される、非常に重要な多元環のクラスの一つである。1989年に、Rickardにより、ブラウアー樹木多元環の導来同値類は、対応するブラウアー樹木の辺の本、及び例外頂点の重複度により決まることが示された。また、2002年に、Rickard-Schapsにより、折りたたみという操作が導入され、これにより、ブラウアー樹木多元環の間の様々な導来同値が与えられた。しかしながら、これらの導来同値に限らず、二つの多元環の間の導来同値が与えられたとき、それらの導来圏の対象が、この導来同値の下で、どのように対応しているかを計算するのは、非常に抽象的で困難である。
     本講演では、Rickard、及びRickard-Schapsにより与えられたブラウアー樹木多元環の間の導来同値の下での対応を、明示的に与えるための解決策を、講演者の結果を用いて紹介する。
 
第77回: 2019 年 7 月 23 日(火) 17:00--
  • 場所:芝浦工業大学大宮キャンパス5号館4F 5451教室
  • 講演者: 斉藤 史朗 氏 (株式会社ブレインパッド エバンジェリスト, 一般社団法人 データサイエンティスト協会 企画委員会委員長,電気通信大学 客員教授)
  • 講演題目:AI時代の「君たちはどう生きるか」ーデータサイエンス概論ー
  • 講演概要: ビッグデータということが言われ初めてから、まだ10年もたっていませんが、その間に、やれデータサイエンスだ、やれAIだと、トレンドと言われる言葉は目まぐるしく変わってきていて、一体実社会では何が必要とされているのかが、大学の中にいる皆様にはとてもわかりづらいのではないでしょうか。他方で、言葉の流行とは別に、世の中は確実にある方向へ向かって大きな変化をしています。この変化は従来の仕事のあり方を根本から変えていくものですが、それは、これから社会へ出ていく皆さんにとっては大きなチャンスでもあります。データサイエンスと言われるものが、社会でどのように機能し、どのような仕事になっているのか、社会はみなさんにどういう期待をしているのかを、実務の世界で20年以上、データサイエンスに携わってきた経験からお話ししたいと思います。
 
第76回: 2019 年 6 月 14 日(金) 17:00--
  • 場所:芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 竹之内 芳文 氏(Division of Mathematics and Computer Science, College of Natural and Applied Sciences (CNAS), University of Guam)
  • 講演題目:Unimodal doubling of the $m$-bonacci sequence
  • 講演概要:The adjacency matrix $A_{\theta_{0}}$ for $\theta_{0}=\left(012\right) $ induces the Fibonacci sequence $\left\{ \ell\left(L_{\theta_{0}}^{n}\right) \right\} $ and the golden ratio $\lim_{n\rightarrow\infty}\ell\left(L_{\theta_{0}}^{n+1}\right) /\ell\left(L_{\theta_{0}}^{n}\right) $. Moreover, the adjacency matrix $A_{\theta_{0}}$ for $\theta_{0}=\left( 012\cdots m\right) $ induces the $m$-bonacci sequence. In general, each cyclic permutation $\theta_{0}$ of length $m+1$ induces the sequence $\left\{ \ell\left( L_{\theta_{0}}^{n}\right)\right\} $, and the limit $\lim_{n\rightarrow\infty}\ell\left( L_{\theta_{0}}^{n+1}\right) /\ell\left( L_{\theta_{0}}^{n}\right)$ is equal to the spectral radius of the matrix $A_{\theta_{0}}$. On the other hand, for each $\theta_{0}$, we can define a cyclic permutation $\theta$ of length $2\left(m+1\right)$, which is so called "a double of $\theta_{0}$". In this talk, we see how the sequence induced by $\theta_{0}$ and the sequence induced by $\theta$ are related.
 
第75回: 2019 年 5 月 27 日(月) 17:00--
  • 場所:芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 上田 好寛 氏(神戸大学大学院海事科学研究科)
  • 講演題目:線形偏微分方程式系における安定性理論の考察
  • 講演概要: 消散構造を持つ対称双曲型方程式系や双曲ー放物型方程式系の平衡点の安定性を判定する条件として、Shizuta-Kawashima(1985)やUmeda-Kawashima-Shizuta(1984)によって構築された安定性条件が知られています。この安定性条件は、離散Boltzmann方程式や緩和効果を加えた圧縮性Euler方程式の線形化問題などに適用することができます。この安定性条件を適用するためには、方程式系がある種の対称性を持つことが必要ですが、近年、梁の振動に起因したTimoshenko方程式や、プラズマ現象に起因したEuler-Maxwell方程式、Cattaneoの法則を考慮した板の振動を現す方程式系など、その対称性を持たない物理モデルも知られてきました。そこで、既知の安定性条件を再定式化することで、これらを包括するより複雑な方程式系に対しても安定性を示すことが本講演の目的です。証明の一つの鍵となるのがLyapnov関数の導出ですが、方程式系に内在する対称性に着目して有用なLyapnov関数を構成します。また本講演では、新たな安定性条件の応用例についても解説する予定です。
 
第74回: 2019 年 2 月 19 日(火) 16:00--
  • 場所:芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 鍛冶 静雄 氏(九州大学)
  • 講演題目:トポロジーに基づく形状設計法
  • 講演概要: 3次元形状をコンピューター上で扱う技術は、computer graphics (CG) や computer aided design (CAD) とともに発展してきた。また最近では 3D プリンタの発展により、digital fabrication も盛んである。これらの分野においては、トポロジーのアイデアが本質的な役割を果たす技術課題が散見される。計算機の上で"かたち”を扱うには、まず対象を有限の記号におとす必要があるが、代数トポロジーはまさにうってつけの道具である。この講演では、講演者がこれまで行ってきた共同研究の中から2つのトピックを取り上げ、単体複体で表された曲面の変形と、離散的な空間曲線としてモデル化されたリンク機構の設計についてお話ししたい。
 
第73回: 2018 年 12 月 5 日(水) 17:00--
  • 場所:芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 佐々木 隆 氏(信州大学理学部特任教授(教育))
  • 講演題目:最も簡単な量子力学:主流のFunctional Analysisへの批判
  • 講演概要: 量子力学の固有値問題とエルミート行列の固有値問題とは深く関係しているが,後者の方がずっと易しい.エルミート,ラゲール,ジャコビなどの古典直交多項式は,厳密に解ける量子力学問題の固有関数の主要部として得られる.通常の量子力学とエルミート行列の固有値問題の類似性と平行性を追求し,1次元の厳密に解ける差分シュレーディンガー方程式を導入する.そのハミルトニアン(シュレーディンガー作用素)は,特殊な種類の3重対角実対称(ジャコビ)行列の有限あるいは無限次元のものである.この最も簡単な量子力学は,アスキースキームの離散変数の古典直交多項式,シャーリエ,マイクスナー,(双対)ハーン,ラカー多項式などとそのqー類似物の統一理論を提供する.これらの多項式がこの最も簡単な量子力学の固有ベクトルの主要部として現れる.Functional Analysisの主要な問題の一つは,線形演算子の「自己共役拡張」である.ビッグq-ジャコビ多項式などの直交測度としてあらわれるジャクソン積分は,最も簡単な量子力学のハミルトニアンの「自己共役拡張」の非自明な例として理解できる.これらの多彩なそして重要な例は,線形演算子の固有値問題を主題とするFunctional Analysisに全く扱われてこなかった.
 
第72回: 2018 年 10 月 12 日(金) 17:00--
  • 場所:芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 大矢 浩徳 氏 (芝浦工業大学)
  • 講演題目:様々な型のアフィン量子群の有限次元表現圏の間に見られる類似性について
  • 講演概要: アフィン量子群とは半単純Lie環をループ化したLie環の普遍包絡環に、パラメータ$q$を入れて変形したHopf代数である.量子群は、可解格子模型において重要なYang-Baxter方程式の非自明な解を組織的に構成する道具としてDrinfeld、Jimboによって80年代に導入された代数であるが、その後も古典的なLie理論に新たな視点をもたらし、さらに有限Chevalley群のモジュラー表現論、結び目理論、共形場理論等数学の様々な分野と関連しつつ多くの研究が行われてきた対象である.特にアフィン量子群の有限次元表現論に関してはそのYang-Baxter方程式の解との関連に動機づけられ、非常に様々な研究がなされてきた.しかしその構造は非常に複雑で、既約表現の構造の記述やそれらの間の拡大、テンソル積における振る舞いに関して基本的な未解決の問題が未だ多く残されている.本講演のテーマは様々なアフィン量子群を持ってきたときの、それらの有限次元表現圏の間の関係についてである.
     アフィン量子群はその元となる半単純Lie環の種類を変えれば、互いに代数構造の異なるものが様々得られる. 一方で、代数としては無関係であるにも関わらず、ある半単純Lie環の組に対してはそれらの有限次元表現圏の間に密接で不思議な関係があることが近年認識されてきている. 本講演ではこの研究テーマの背景を概説した後、上記の密接な関係の一例として、$A_{2n-1}^{(1)}$型と$B_n^{(1)}$型のアフィン量子群の有限次元表現圏から得られる量子Grothendieck環と呼ばれる環の間に``良い''同型が得られたことを報告し、その応用について解説する. 特に上記の基本的な未解決問題の一つである、既約表現の次元(より詳しくは$q$-指標)の決定という問題に応用があることを述べる. 本研究はDavid Hernandez氏との共同研究である.
 
第71回: 2018 年 10 月 3 日(水) 17:00--
  • 場所:芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 櫻井 みぎ和 氏 (芝浦工業大学)
  • 講演題目:仮想結び目の不変量と局所変形の性質について
  • 講演概要:本講演では,仮想結び目の不変量と局所変形の関係性について解説をする.
     結び目とは,3次元空間への円周の埋め込みの像である.結び目理論は数学のみにとどまらず,ゲームの開発,暗号,DNA,高分子化合物,音,心理学の研究へ応用されるなど,様々な分野へ展開されている.講演者の専門分野は結び目理論の一般化として提唱された仮想結び目理論である.仮想結び目理論は現在多くの研究者が取り組んでいる研究の一つであり,さらなる発展が見込まれている.
     ここでは,仮想結び目理論に関して,講演者が取り組んできた課題や現在取り組んでいる課題について解説をする.
 
第70回: 2018 年 9 月 11 日(火) 15:00--
  • 場所:芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 平岡 裕章 氏 (京都大学・高等研究院(KUIAS)、理化学研究所・革新知能統合研究センター(AIP))
  • 講演題目:パーシステントホモロジー:理論と応用
  • 講演概要:この講演ではパーシステントホモロジーに関わる数学および応用について解説する.ここでパーシステントホモロジーとは,理論および応用の両側面で現在活発に研究が進められている数学概念であり,位相的データ解析(Topological Data Analysis, TDA)と呼ばれる分野の代表的な手法として知られている.パーシステントホモロジーは,数学的には位相空間のフィルトレーションに対する次数付き加群としてのホモロジーで定式化されるが,クイバー(Quiver)の表現論を用いた一般化をはじめ,確率論,統計・機械学習,逆問題,最適輸送などへ急速に展開している.またパーシステントホモロジーは諸科学の問題へも実際に応用されており,その適用範囲は材料科学,生命科学,脳科学,ソーシャルネットワーク,医療,金融など多岐にわたる.
     ここではパーシステントホモロジーの歴史的経緯や上に挙げた様々な数学的な広がりを解説する.また,材料科学を中心に,実際にパーシステントホモロジーが現場で使われている例も紹介し,トポロジーに基礎をおく新たな応用数学手法としての魅力も伝えたい.
 
第69回: 2018 年 7 月 4 日(水) 18:00--19:00
  • 場所:芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: Siegfried M. Rump 氏 (Hamburg University of Technology)
  • 講演題目:Determinants and Gershgorin circles
  • 講演概要:When calculating verified inclusions of the determinant of a matrix, a common method uses some preconditioning followed by applying Gershgorin's circle theorem. However, the way it was used previously lacks a mathematical result. We will prove that indeed taking the product of the Gershgorin circles implies a rigorous inclusion of the determinant of the matrix. The proof uses old results in matrix theory by Ostrowski and Hans Schneider.
 
第68回: 2018 年 6 月 27 日(水) 17:00--18:00
  • 場所:芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: Fuzhen Zhang氏 (Nova Southeastern University, USA)
  • 講演題目:Eigenvalue inequalities of the product of a Hermitian matrix and a positive definite matrix
  • 講演概要:Eigenvalue problem of matrices is of central importance in matrix theory, matrix computation, linear algebra and related areas. Traditionally, eigenvalue inequalities in partial sums involve two Hermitian matrices for sum and a pair of positive semidefinite matrices for product. We show some eigenvalue inequalities of the product of a Hermitian matrix and a positive definite (Hermitian) matrix; we use the results to study perturbation problems of generalized eigenvalues.(Joint work with Bo-Yan Xi.)
 
The 2nd SIT-UOG workshop on pure/applied mathematics and computer science
  • Date and Time: 10:25-16:00, June 9, 2018
  • Location: Room 5251, Omiya Campus of Shibaura Institute of Technology, Japan
  • Section I: 10:25 - 11:41
  • Shimpei Ozawa(SIT, M1):
    Introduction to Lyapunov's inequality
  • Dr. Shingo Takeuchi(SIT):
    Generalization of the trigonometric functions
  • YonChol Yan(SIT, M2):
    Numerical Analysis for Blow-up Problems of Stochastic Differential Equations
  • Satoshi Nakamura(SIT, M2):
    Consensus Control for Multi-Link Robot Systems
  • Dr. Guisheng Zhai (SIT):
    A Convex Combination Approach in Switched System Design

  • Session II: 12:40 - 13:36
  • Vince Campo (UOG, Junior):
    Using mathematical modeling to predict students' success
  • Tooru Yano(SIT, M2):
    State Space Model of Realized Volatility under the Existence of Dependent Market Microstructure Noise
  • Masahisa Shimizu(SIT, M2):
    Developing, Pricing and Hedging Exiotic Options Depended on the Maximum and Minimum Value
  • Dr. Tomonori Nakatsu (SIT):
    Stochastic analysis in finance and related topics

  • Session III: 13:45 - 14:44,
  • Overall title of the following 4 presentations:
    Implementation and Analysis of Respondent Driven Sampling on Guam
  • Dr. Grazyna Badowski(UOG):
    Introduction
  • Louis Jane Dulana (UOG, Senior):
    Analysis of convergence of Estimates
  • Janessa Roman (UOG, Graduate):
    Patterns in Social Networks
  • Jayson Morales (UOG, Senior):
    Assessing the Geographic Coverage and Spatial Clustering
  • Dr. Grazyna Badowski(UOG):
    Sensitivity Analysis of Respondent Driven Sampling Estimates

  • Session IV: 15:00 - 16:00,
  • Dr. Sampei Hirose(SIT):
    Discrete binormal flow on discrete curves
  • Dr. Yoshifumi Takenouchi(UOG):
    "Digital" entropy as an invariant under a refinement of the partition of the interval
  • Dr. Masaki Kameko(SIT):
    Morava K-theories of finite special orthogonal groups in dimension 3
 
第67回: 2018 年 2 月 23 日 (金) 15:00~
  • 場所:芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 斎藤 明 氏(日本大学)
  • 講演題目:有限集合を生成する禁止部分グラフ
  • 講演概要:いくつかの連結グラフ$H_1,\dots, H_k$について、いずれの $H_i$($1\le i\le k$)も誘導部分グラフに含まないグラフを$\{H_1,\dots, H_k\}$-フリーグラフとよぶ。またこのときの $H_1,\dots, H_k$ を禁止部分グラフとよぶ。グラフ理論では、様々な性質について禁止部分グラフとの関係が調べられている。こうした禁止部分グラフの研究では、対象となる命題について有限個の反例が現れることがある。このとき我々はそれを「有限個の反例により命題は偽である」と解釈せず、「有限個の例外を除いて命題は真である」と解釈する。ところがこの立場には1つの落とし穴がある。禁止部分グラフ $H_1,\dots, H_k$ によっては、連結な $\{H_1,\dots, H_k\}$-フリーグラフ全体の成す集合$\mathcal{H}$ が有限集合になることがある。もし $\mathcal{H}$ が有限集合になると、この集合の全ての要素を「有限個の例外」とすることにより、 $\mathcal{H}$ においてあらゆる命題が有限個の例外を除いて真となる。このような $\mathcal{H}$ はグラフの特定の性質に何ら知見を与えない研究上の雑音である。雑音は研究の視界を乱すので、除去する必要がある。以前はこのような例は自明なものしかないと思われていたが、禁止部分グラフの研究が進み、様々なグラフが禁止されるようになってくると、有限集合を生成する非自明な禁止部分グラフの存在が明らかになってきた。本講演では、有限集合を生成する非自明な禁止部分グラフを特定、除去する試みについて、現状を概観する。

 
第66回: 2017 年 12 月 5 日 (火) 18:40~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 5241教室
  • 講演者: 中川 貴裕 氏(芝浦工業大学)
  • 講演題目:有限体上でのHeun の微分方程式
  • 講演概要:特異点が0, 1, ∞ の3点あるGaussの超幾何微分方程式は昔からよく研究されてきた。その自然な拡張である特異点を4つもつHeun の微分方程式の解の構造はGaussの超幾何微分方程式の解よりも複雑で現在でも研究されている。Heun の微分方程式に現れる係数が有理数のときその係数を有限体$\mathbb{Z}/p \mathbb{Z}$の元とみなすことができ, Heun の微分方程式を有限体上の微分方程式とみなすことができる。この有限体上での微分方程式の解と$\mathbb{C}$上での微分方程式の解には関係があることが知られており、Grothendieck予想と呼ばれる問題がある。本講演ではGrothendieck予想について概説し、この問題に関連して、特別な場合の Heun equationに対して、解の係数がどのくらい素数で割れるかを調べた結果を述べる。

 
第65回: 2017 年 11 月 20 日 (月) 17:00~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 早水 桃子 氏(統計数理研究所)
  • 講演題目:生物系統学における離散幾何学
  • 講演概要:ヒトやサルなどのゲノム配列の違いに基づいて算出される「距離」から系統樹を再構築したいというのは生物系統学のスタンダードな問題設定である.しかし,与えられた距離を実現する系統樹は唯一つに定まるのだろうか?また,そもそも,その距離が系統樹で実現可能であることを確認するにはどうすれば良いのだろうか?――1960〜70年代の組合せ論の研究者たちによって研究され,Peter Bunemanによって解決されたこれらの問題は,生物の系統推定の基礎をなすと同時に,Gromov (1987)による双曲群の理論や,Bandelt & Dress (1992) のsplit decomposition theoryなど,豊かな数学的広がりを生み出した.本講演では「系統学の基本定理」と呼ばれるBunemanの四点条件と,そこから発展した研究の流れを数学・生物学の両方の視点で概説し,現代の先端的な系統学における生物学的な問題意識と数学的な取り組みを紹介する.

 
第64回: 2017 年 10 月 11 日 (水) 18:30~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 相原 研輔 氏(東京都市大学 知識工学部 情報科学科)
  • 講演題目:大規模連立一次方程式に対する短い漸化式を用いるクリロフ部分空間法の収束性
  • 講演概要:様々な科学技術計算で現れる大規模な連立一次方程式に対して,クリロフ部分空間法は有効な反復法群である.しかし,浮動小数点演算において生じる丸め誤差の影響により,理論通りに収束しない場合も多い.本講演では,共役勾配(CG)法や共役残差(CR)法など,短い漸化式によって近似解ベクトルと対応する残差ベクトルを更新する解法を取り上げ,丸め誤差が収束の速さや近似解の精度にどのような影響を与えるのかについて議論する.また,収束性を改善する手法について,講演者の最近の成果も交えて紹介したい.

 
第63回: 2017 年 7 月 7 日 (金) 18:00~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 佐藤 寛之 氏(東京理科大学 工学部 情報工学科)
  • 講演題目:幾何学的な最適化理論とその周辺
  • 講演概要:制約付き最適化問題において,制約条件を満たす点全体がリーマン多様体をなす場合には,これをその多様体上の制約なし最適化問題と見なすというアプローチが近年注目を集めている.本講演では,こうした幾何学的な最適化理論とこれまで研究されてきたアルゴリズムについて紹介する.一方,機械学習分野などにおける大規模な最適化問題に有効な確率的最適化手法が最近盛んに研究されているが,これらもリーマン多様体上に拡張され始めている.このように,幾何学的な最適化は幅広い分野への応用も期待される.その中でも,機械学習や制御理論,数値線形代数など,いくつかの応用分野について,講演者の研究結果を交えながら紹介する.

 
第62回: 2017 年 6 月 21 日 (水) 17:00~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 内海 晋弥 氏(早稲田大学基幹理工学部)
  • 講演題目:局所線形化流速を用いる Lagrange-Galerkin スキームとその実装法
  • 講演概要:Lagrange-Galerkin 法は特性曲線法と有限要素法を結合した手法であり,移流拡散問題や Navier-Stokes 問題などの流れ問題に対する有効な数値計算法である.講演者らは局所線形化流速を用いる Lagrange-Galerkin スキームを開発し,従来のスキームが抱えていた理論と計算の乖離を解決した.本スキームは,厳密に計算することができ,数値解の厳密解への収束性を証明することができる.本講演では,Navier-Stokes 問題に対するスキームを導入し,空間2次元におけるいくつかの数値例を紹介する.本スキームを実装するうえで,流れに沿って移動した三角形と元の三角形メッシュとの交わりを記述する必要がある.そのアルゴリズムについても紹介する.本研究は田端正久氏(九州大学名誉教授,元早稲田大学特任教授)との共同研究である.

 
第61回: 2017 年 5 月 31 日 (水) 17:00~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 蛭子 くるみ 氏(東北大学)
  • 講演題目:間欠的ホルモン療法を記述するハイブリッド制御問題の安定性解析
  • 講演概要:本講演では, 前立腺癌の間欠的ホルモン療法を記述するハイブリッド制御問題の安定性について考察する. ハイブリッド制御問題は最適制御問題の一般化として位置づけられる問題である. その一方で, ハイブリッド制御の目的はコスト汎関数の単なる最小化や最大化とは限らないため, 何をもって制御を最適とするかは自明ではない. 本講演では, 最適性の候補となり得る安定性の概念を導入し, このハイブリッド制御が安定となるための十分条件について得られた数学的な研究成果を紹介する. なお, 本講演の内容は岡部真也准教授 (東北大) との共同研究に基づく.

 
第60回: 2017 年 1 月 25 日 (水) 17:00~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 李 聖林 氏(広島大学)
  • 講演題目:遺伝子発現の「時間遅れ」を入れると「Turingパターン」はどう変化するのか
  • 講演概要:細胞はどうやって自分の位置を把握し、的確な時間に正確な機能を果たすことができるのか。生命の自己組織化という深い謎に奇跡のような糸口を提示したのは、 数学者 A. Turing (Turing, 1952) である。数学におけるTuringパターンというのは自己活性と抑制の相互作用をもつ2つの物質が拡散の違いにより、空間的に一様状態の安定性が崩れ、非一様性が生じることをいう。極めてシンプルな仕組みだが、Turingモデルでは実に美しい様々なパターンが生成される。本講演では、細胞の遺伝子発現の時間遅れを取り入れたTuringモデルを紹介し、時間遅れがない場合とある場合で、パターン形成がどう変わるのかを紹介する。2010年~2012年に行った時間遅れTuringパターン研究の結果からシミュレーション結果をまとめて重点的に紹介し、時間遅れ反応拡散系の解のダイナミクス全般的にみていく。1次元、2次元空間及びGrowing Domainでの時間遅れ反応拡散系のダイナミクスを全体的に紹介する予定なので、数理的・数学的面白い問題を見つけたい方は大歓迎。(** 本研究においては以下のreferenceを参考してほしい)
    [1] S. Seirin Lee, E. A. Gaffney, N. A. M. Monk, The influence of gene expression time delays on Gierer-Meinhardt pattern formation system. Bulletin of Mathematical Biology, 72 (2010) 2139-2160.
    [2] S. Seirin Lee, E.A. Gaffney, Aberrant behaviours of Reaction Diffusion Self-organisation Models on Growing Domains in the Presence of Gene Expression Time Delays. Bulletin of Mathematical Biology, 72 (2010) 2161-2179.
    [3] S. Seirin Lee, E.A. Gaffney, R.E. Baker, The dynamics of Turing patterns for morphogen-regulated growing domains with cellular response delays. Bulletin of Mathematical Biology,73 (2011) 2527-2551. (2010).
    [4] E.A. Gaffney, S. Seirin Lee (Equally contributed), The Sensitivity of Turing Self-Organisation to Biological Feedback Delays: 2D Models of Zebrafish Pigmentation. Mathematical Medicine And Biology (2013)1-23.

 
第59回: 2016 年 12 月 7 日 (水) 17:00~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: Marko Lange 氏(Waseda University)
  • 講演題目:Accurate inner product computations
  • 講演概要:The sensitivity of an inner product $a^T b$ can be characterized by its condition number $\frac{|a|^T |b|}{|a^T b|}$. If the condition number of a given problem exceeds the accuracy of the respective floating-point number system or the application requires reversible, accurate, or even exact results, it is necessary to use alternative algorithms in place of the straightforward evaluation of the inner product. In order to compute accurate results for a given inner product, it is first necessary to transform the individual products into sums of two floating-point numbers. After this error-free transformation any algorithm for the accurate computation of summations is applicable. There are four main approaches for the computation of accurate (exact) summation results, encompassing cascaded summations, computations in multi-precision formats, algorithms based on orderings, and approaches using auxiliary accumulators. In this course we will discuss advantages and disadvantages of these algorithms. Furthermore, a new summation algorithm that makes use of auxiliary accumulators will be introduced. This new algorithm not only improves upon previous procedures using auxiliary accumulators but competes with realizations of the other approaches in their operational area.

 
第58回: 2016 年 11 月 21 日 (月) 18:00~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 荒井 迅 氏(北海道大学大学院理学研究院)
  • 講演題目:複素から見た分岐理論
  • 講演概要:分岐理論は微分方程式や力学系の研究において重要な役割を果たすが、それを複素数に拡張することでどのような世界が見えてくるかを考える。システムを複素化すると相空間やパラメータ空間の次元が倍になるため、解析が大変になるように思えるかも知れない。しかし実際には、正則関数の剛性やモノドロミー理論などの複素解析の技法を導入するこにより、理論的にも数値計算的にも大きなメリットが得られることがある。本講演ではこのような試みについて基本的な力学系を例に解説したい。

 
第57回: 2016 年 10 月 31 日 (月) 18:00~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 梶原 健司 氏(九州大学マス・フォア・インダストリ研究所)
  • 講演題目:曲線の可積分変形と渦糸の離散モデル
  • 講演概要:古典微分幾何,特に曲面・曲線論は,19世紀のDarbouxやBäcklundによる曲面の変換論に代表されるように,非線形波動現象と並ぶ可積分系の一つの源である.最近,曲面や曲線の背後の構造を上手に保存した離散化の研究が,離散微分幾何という名の下で盛んに進められている.この講演では離散微分幾何に対する可積分系からのアプローチの一つとして,曲線の可積分変形の理論とその離散化について述べる.歴史的な背景と可積分系の離散化の基本的なアイデアについて説明した後,空間曲線のFrenet-Serretの公式と可積分系のLax pairとの関係を軸に,いくつかの典型的な可積分変形について議論する.特に,複素曲率が非線形シュレディンガー方程式で記述され,流体中の渦糸のモデルとしてよく知られている空間曲線の陪法線流を取り上げ,最近得られたその離散モデルについて詳細に議論する.

 
第56回: 2016 年 10 月 6 日 (木) 18:00~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 池田 創一 氏 (芝浦工業大学工学部共通学群数学科目)
  • 講演題目:ベルヌーイ多項式とは何だろうか
  • 講演概要: ほとんどの人は自然数の1乗、2乗、3乗を1からnまで加えた和の公式を高校生のときに勉強したことがあるかと思います。その公式を4乗以上の場合についても求めたいと思うのは自然なことでしょう。そこに現れるのがベルヌーイ多項式です。ベルヌーイ多項式は様々な興味深い性質が知られているだけでなく、その特徴付けもいくつか知られています。そしてベルヌーイ多項式を特徴づける問題は、関数方程式論や組合せ論の一分野であるUmbral calculusとも関わるものです。本講演では、ベルヌーイ多項式の導入から始め、関数方程式論とUmbral calculusについて簡単に説明し、最後に講演者が最近得たベルヌーイ多項式の特徴付けに関する結果に触れることを目指します。

 
第55回: 2016 年 7 月 5 日 (火) 18:00~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 関川 浩 氏 (東京理科大学 理学部 数理情報科学科)
  • 講演題目:数値数式融合計算
  • 講演概要: 数式処理と数値計算双方の長所を取り入れた,信頼性が高く効率のよい計算方法を実現する技術である数値数式融合計算を紹介する.数式処理の長所は,数式の係数などの入力値が誤差を含まなければ,得られる結果がつねに正確であるという点である.しかし,一方で,浮動小数点計算を利用する数値計算に比べ,速度が遅く,多量のメモリを必要とする,入力値が誤差を含むときには適切な出力が得られない場合がある,などの短所がある.数値数式融合計算は,数式処理をベースとして数式処理と数値計算をアルゴリズムのレベルで融合して両者の長所を生かそうとする計算技術であり,近年,制御系を始めとするさまざまな分野の設計などへも適用されるようになってきた.本講演では,数式処理と数値計算を単純に組み合わせると破綻する例から始めて,どのように組み合わせればよいのかを説明したのち,典型的な問題をいくつか紹介する予定である.

 
第54回: 2016 年 6 月 8 日 (水) 17:00~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 竹之内 芳文 氏(Division of Mathematical Sciences, College of Natural & Applied Sciences (CNAS) University of Guam)
  • 講演題目: "Digital" Entropy Induced by Unimodal Cyclic Permutations and A Representation of Sarkovskii's Ordering by It
  • 講演概要: We give the ternary numbers that represent the total order induced by the forcing relation defined on the set of all unimodal cyclic permutations. In particular, Sarkovskii’s Ordering can be represented by them.

 
第53回: 2016 年 4 月 27 日 (水) 16:30~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 長山 雅晴 氏(北海道大学電子科学研究所 / JST CREST)
  • 講演題目: 角層バリア機能の数理モデリングとその応用
  • 講演概要: 皮膚の持っている重要な機能として 角層バリア機能がある.この機能は体内の水分保持を行う重要な機能であり,角質細胞と角質細胞間を埋めている細胞間脂質によって実現されている.我々はこの角層バリア機能を実現する仕組みを数理科学的に理解する研究を行っている.バリア機能の維持には角層直下の表皮細胞に見られるCa2+局在化が重要であることが報告されていることから,我々はこのCa2+局在に注目した角層バリア機能の恒常性維持機構を理解するための数理モデルを構築した.この数理モデルは表皮細胞の細胞分裂,細胞分化、細胞運動等の細胞ダイナミクスを含んでいる.この数理モデルから,単位時間当たりの細胞分裂数が多ければ,角層バリア機能は維持されるが,単位時間当たりの細胞分裂数が少なくなると,角層バリア機能が低下することを示唆した.この結果と加齢が進んだ表皮では分裂マーカーが減少している観察結果を合わせると,我々の結果は角層バリア機能の老化現象を表しているのではないかと考えられる.また,真皮乳頭層の凹凸と比較して,皮膚表面の角層は比較的平坦であることが知られている.数理モデリングからの結果から,細胞外Ca2+濃度に依存した分化速度よりも細胞内Ca2+による分化速度の方が早い場合には,角層が比較的平坦になることがわかり,皮膚の表面が比較的平坦になる仕組みを示唆することができた.さらに,1つの表皮幹細胞(数理モデル上では分裂回数制限なし)が異常分裂(細胞周期が早い),異常分化(ターンオーバーが早い)し,その幹細胞から分裂した娘幹細胞(分裂回数有限)も異常分裂,異常分化すると仮定すると,数理モデルから「鶏眼」が生じることがわかった.

 
第52回: 2016 年 3 月 11 日 (金) 17:00~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館3F 5342教室
  • 講演者: 古城 知己 氏(芝浦工業大学システム理工学部数理科学科)
  • 講演題目: Pseudo-parabolic 方程式とその周辺
  • 講演概要: Pseudo-Parabolic Equations(擬放物型方程式)を抽象的な関数空間の中で考察する。周期解の存在定理や初期値問題の適切性に関して、堤正義氏との共同研究の結果を報告する。方程式中に現れる二つの非有界作用素のドメインの包含関係、線形性または非線形性、角度条件、近似方程式のつくり方などが問題となる。また、関連した話題についても触れたい。

 
第51回: 2016 年 2 月 23 日 (火) 15:00~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 山口 尚哉 氏(九州大学数理学府博士後期課程2年)
  • 講演題目: 非可換行列式の有限群, 有限群の表現論への応用
  • 講演概要: 有限群に対して, Dedekindは群行列式を定義した.この群行列式はn変数のn次同次多項式であり,その既約な因数分解を与えるために, Frobeniusは有限群の表現論を構築した.今述べたように群行列式が果たした功績は大きいが,Schurによる有限群の表現論の簡易化, Notherによる抽象化を経て, 群行列式は重要視されなくなった.しかしながらJohnsonやFormanek, Sibleyの研究にあるようにまた再び注目されつつある.本講演者は, 群行列式の既約とは限らない因数分解に着目して研究している.上の研究にはある非可換行列式を用いるのだが,この非可換行列式により, 群の移送やその性質, 有限群の既約表現の次数に関する定理を導けることが分かった.本講演では, まずStudy行列式の拡張である非可換行列式を定義し,その非可換行列式を用いて群の移送を定式化する.そして群の移送の性質を非可換行列式の性質により理解する.最後に, Dieudonné行列式や群行列式の既約とは限らない因数分解との関連を簡潔に述べる.非可換行列式により群の移送を理解するという考えについての注意だが,本講演者より先に, 京都大学の梅田亨氏が2012年の表現論シンポジウムにおいて(講演集で)以下のように述べている. "誘導表現の基礎となるG加群に於ける「非可換行列式」という解釈で「移送」も理解できないことはない."(梅田, 2012, p.8).本講演者はこのシンポジウムに参加しており, このアイデアを聞いていた.つまり群の移送を非可換行列式により理解するという考えは梅田亨氏の思想圏内であり, 本講演者はこれを参考にしている.しかしながら, 群の移送を非可換行列式により理解するという考えを深め, 定式化へと議論を進めたことは,梅田亨氏の思想圏内から外れたところにあると考えている.

 
第50回:拡大数理談話会,2015 年 12 月 11 日 (金) 10:30~15:30
  • The First Shibaura Workshop on Mathematics, Systems and Control (SWMSC2015)
  • Date and Time: 10:30-15:30, December 11 (Friday), 2015
  • Location: Room 5342, Omiya Campus of Shibaura Institute of Technology, Japan
  • Opening Greeting: MURAKAMI, Masato (President of Shibaura Institute of Technology)

  • Section 1: 10:40 - 12:30
  • HO, Daniel W. C. (City University of Hong Kong):
    Recent Development on Distributed Networked System under Communication Constraints
  • ITO, Toshio (Shibaura Institute of Technology):
    Prediction of Meta-stability Phase through Analysis of Driving Behavior
  • ANO, Katsunori (Shibaura Institute of Technology):
    Repeated Free Boundary Problem for Optimal Multiple Stopping on American Put Option
  • FUKUDA, Akiko (Shibaura Institute of Technology):
    Eigenvalue Solvers in Terms of the Discrete Integrable Systems
  • OZAKI, Katsuhisa (Shibaura Institute of Technology):
    Numerical Computations: Verified Results and Non-Verified Results
  • SUZUKI, Tatsuo (Shibaura Institute of Technology):
    Noncommutative Determinant and Its Applications
  • ISHIWATA, Tetsuya (Shibaura Institute of Technology):
    Interface Motion, Blow-up Problem, Numerical Analysis and so on

  • Session 2: 13:30 - 15:30
  • HUANG, Chi (Taiyuan University of Technology):
    Synchronization Analysis of Distributed Networked Systems with Event-based Sampling Scheme
  • ITO, Kazuhisa (Shibaura Institute of Technology):
    Control of Aqua Drive System and Its Applications
  • KIMURA, Gen (Shibaura Institute of Technology):
    An Attempt to Derive Quantum Theory from Physical and Informational Principles
  • ANADA, Koichi (Waseda University Senior High School & Shibaura Institute of Technology):
    Some Geometrical Features Detected by Properties in Solutions of Differential Equations
  • KAMEKO, Masaki (Shibaura Institute of Technology):
    Loops, Groups and Cohomology Theories
  • IDOGAWA, Tomoyuki (Shibaura Institute of Technology):
    On Mathematical Morphology and One of its Applications
  • MATSUDA, Haruhide (Shibaura Institute of Technology):
    On Degree-constrained Spanning Trees in Graph Theory
  • ZHAI, Guisheng (Shibaura Institute of Technology):
    Distributed Consensus Algorithms in Multi-Agent Cooperative Control

  • Closing Remarks: KOMEDA, Takashi (Vice President of Shibaura Institute of Technology)
 
第49回: 2015 年 11 月 23 日 (月) 18:00~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 都築 怜理 氏(東京工業大学大学院D3,日本学術振興会 特別研究員)
  • 講演題目: 動的領域分割を用いたGPUスパコンにおける流体構造連成の大規模粒子法シミュレーション
  • 講演概要: 近年、スパコンは目覚ましい発展を遂げ、2020年にはエクサ・スケール計算の時代に突入する。これにより、今まで以上に現実に近い社会価値のあるシミュレーションが可能になる。自然災害の研究においても、津波による防潮堤などの構造物の破壊や、その破壊物の漂流による二次災害など、様々な現象を考慮した正確な実スケール・津波シミュレーションの実現が強く期待されている。土砂や漂流物と流体を連成した計算手法が必要であるが、空間領域を格子により離散化する手法では衝突・破壊・移動を伴う漂流物を多数含む計算は非常に不得意である。一方、空間を粒子で離散化する「粒子法」では、この様な問題を簡単に扱うことができる。本研究では、粒子法による大規模流体構造連成シミュレーションを、GPU(Graphics Processing Unit)を演算加速器として搭載するGPUスパコンを用いて高効率に実現する。個々のGPUでは局所性の高い粒子法の計算スキームに注目し、近傍粒子探索やLinked-list法等による高速化を図る。複数GPU間ではGPUスパコンの持つ階層的なメモリ構造に適した空間充填曲線に基づく動的領域分割を導入する。本講演では、数億個の解析粒子を用いた大規模流体構造連成シミュレーションを、光源追跡法によるリアリスティックな可視化とともに紹介する。

 
第48回: 2015 年 10 月 9 日 (金) 18:00~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 宮路 智行 氏 (明治大学先端数理科学インスティテュート)
  • 講演題目: 長方形領域における樟脳円板の周期的・準周期的運動とカオス
  • 講演概要: 円板上に固めた樟脳を水面に浮かべると,自発的な運動が生じる.樟脳円板はまるでビリヤード球のように直進と反射を繰り返す.我々は長方形領域における樟脳円板の運動を記述する4次元常微分方程式系を考える.数値計算によれば,領域が正方形のときは,通常のビリヤード問題と異なり,各辺を順に巡るリミットサイクルが現れる.領域のアスペクト比が少し変わると,アトラクタはそれに応じて連続的に変形するが,アスペクト比が大きく変わると,異なるタイプの周期軌道や準周期的軌道やカオス的軌道がアトラクタとして観察される.本講演では,このようなアトラクタの変化が生じる理由を数値計算と力学系の分岐理論によって説明する.

 
第47回: 2015 年 7 月 30 日 (木) 18:00~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 谷口 隆晴 氏 (神戸大学大学院システム情報学研究科)
  • 講演題目: 構造保存型数値解法の楽器シミュレーションへの応用
  • 講演概要: 近年,新たな楽音合成手法として,微分方程式で表された物理モデルによる楽器シミュレーションに注目が集まっている.このような手法では,モデルとなる微分方程式を差分法などを用いて数値的に解くことになるが,音波の数値計算は現象の時間スケールに比べて長時間の計算が必要となり,計算が難しい.そのため,通常の数値解法では意味のある計算結果が得られないことがある.一方,長時間シミュレーションは天文学などの分野などでも必要となり,そのような分野では,シンプレクティック性やエネルギー保存則などといった,力学的に重要な性質を保った数値解法の研究がされてきた.このような数値解法は構造保存型数値解法と呼ばれ,安定性や現象の再現性などの点から優れたものとなりやすく,特に長時間の数値計算で有効であるとされている.本講演では,構造保存型数値解法の楽器シミュレーションへの応用について,モデルや数値解法の基礎的な説明なども含めて紹介する.なお,本研究は芦辺健太郎・石川歩惟・長谷阪祐太らとの共同研究である.

 
第46回: 2015 年 6 月 4 日 (木) 18:10~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: Siegfried M. Rump 氏 (Hamburg University of Technology)
  • 講演題目: Structured perturbations
  • 講演概要: The sensitivity of a problem determines, in general, the maximally achievable accuracy when solved by a numerical algorithm. For example, for a linear system $Ax=b$ the sensitivity is characterized by the condition number $\|A^{-1}\|\|A\|$. When solving special linear systems, for example with symmetric, Toeplitz or circulant matrix, special solvers are available. Such solvers are often much faster than a general solver such as Gaussian elimination. For example, it suffices to know the first row of a symmetric positive definite Toeplitz matrix to identify the matrix, and a fast algorithm needs only $\mathcal{O}(n^2)$ operations compared to $\mathcal{O}(n^3)$ operations for Gaussian elimination. However, as only the first row is input to the Toeplitz solver, perturbations are necessarily restricted to Toeplitz perturbations. Therefore, it is necessary to adapt the definition of the sensitivity, i.e. the condition number, to structured perturbations. In this regime many interesting mathematical questions arise, in particular the difference between the sensitivity with respect to general perturbations compared to structured perturbations. We will discuss several results in this area including linear systems, an extension of the Eckart-Young theorem to structured perturbations, componentwise perturbations and, as a very new result published in 2015, on the strutured backward error.

 
第45回: 2015 年 5 月 21 日 (木) 18:30~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 江夏 洋一 氏 (東京理科大学)
  • 講演題目: 感染症モデルにみられる閾値現象とその応用
  • 講演概要: 国内外の移動手段の多様化や人口増加に伴う都市化などの環境変動によって, 私たちは常に感染症の流行危機に晒されている.公衆衛生上で益々身近な課題となった感染症の駆逐に取り組むべく, 高度な医療発達の一方で Kermack や McKendrickをはじめとする感染症の流行規模の予測に関する定性的研究も著しい発展を遂げてきた. 本講演では, 感受性個体, 感染個体,回復個体等の数を変数とする感染症モデルの正値解の漸近挙動の分類によって得られる終局的な感染流行規模の変化に関する近年の話題を述べる.基本再生産数 R0 (一人の感染個体が感受性個体群に侵入した際に生産される二次感染個体数の平均値)を閾値とするの解の安定性変化に着目しながら,感染からの経過時間の長さについて感染個体群を分類することで得られる再生方程式の定性理論も紹介したい.

 
第44回: 2015 年 4 月 23 日 (木) 18:00~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 廣瀬 三平 氏 (芝浦工業大学教育イノベーション推進センター)
  • 講演題目: コンピュータグラフィックスで用いられる数学について
  • 講演概要: コンピュータグラフィックス(CG)は映画やゲーム, 物理現象のシミュレーション, 工業製品のデザインなど様々な用途に用いられている.このCGにおいては多様な数学的手法が用いられており, この傾向は近年ますます拡大している.例えばNavier-Stokes方程式やLaplace方程式などの微分方程式, Clifford代数, 微分幾何, 可積分系, Dirac作用素, Lie理論など様々である.また, これらは単に既存の数学を適用するだけでなく, 種々の概念の離散化の動機ともなっており, 離散微分幾何や離散可積分系の研究がCGへの適用をひとつの動機として進められている.本講演ではここ最近のCGに関わる数学の話題をいくつか取り上げ, どのような数学が用いられているのかの説明を行う.

 
第43回: 2015 年 3 月 10 日 (火) 17:00~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 丸野 健一 氏(早稲田大学)
  • 講演題目: 非線形波動と自己適合移動格子スキーム
  • 講演概要: あるクラスの非線形波動方程式に対して解の構造を保つ離散化を行うと、大変形が生じる領域に自動的に細かいメッシュを自動生成していく差分スキーム『自己適合 移動格子スキーム』が自然に導出される。自己適合移動格子スキームの背後にはホドグラフ変換と呼ばれる保存則と深く関連する座標変換があり、そのホドグラフ変換を離散化することが自己適合移動格子スキーム構築の鍵となる。このとき,離散化した保存則の保存密度がメッシュの格子間隔になり、このことによって自己適合移動格子スキームは非常に精度のよい数値計算法となる。講演では自己適合移動格子スキームの構築法と数値計算例、離散微分幾何学との関連を解説する予定である。

 
第42回: 2015 年 1 月 15 日 (木) 18:00~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 村上 雅人 氏(芝浦工業大学学長)
  • 講演題目: 自然は数学という言葉で書かれている
  • 講演概要: 標題は、ガリレオ・ガリレイ (Galileo Galilei)の言葉である。The book of Nature is written in the language of Mathematics. それを意識したのは、虚数 (imaginary number) との出会いであった。虚数とは実在しない数のことで、英語のimaginaryを直訳すれば想像数となる。同じ数を2回かけると、正の数となるが、仮に、2回かけて負になる数があったらどうだろうという数学者の戯れでできた数である。通常はiと表記し i2=-1あるいはi=√-1と定義される。
     1572年にBombelliが考案したとされているが、本人もまったくの遊びと考えていたようだ。デカルトも想像上の数で何の役にも立たないと書いている。しかし、この虚数には驚くべき能力が隠されていたのである。そして、現代の理工数学は虚数なしでは語れない。
     実は、虚数には「回転演算子」と「1次元から2次元への拡張」という機能がある。すべての実数は、数直線と呼ばれるたった1本の線上にすべて存在する。整数、分数、少数、無理数すべて1本の線上にある。
     ここで、×(-1)という操作を考えてみよう。この掛け算は、原点(0)を中心にして数を180°(反時計まわりに)回転させる。そして、もう1回同じ操作を行うと元に戻る。つまり360°の回転となる。ところで×(-1) =×i2 = ×i×iとなるので、×iという操作を2回行うと180°の回転となる。つまり、×iという操作は、反時計まわりに90°回転させる操作と等価となるのである。しかし、数直線上には、こんな点はなく、数直線に直交したもうひとつの軸である虚数軸が必要となる。これが1次元から2次元への拡張である。そして、虚数の世界は、実数と直交しているのである。
     この虚数の性質が、理工分野で思わぬ応用効果を生むとともに、ミクロな世界を司る量子力学においては、虚数なしでは、その本質を表現できないという側面がある。このため、「万物は虚数なり」というひともいる。本談話会では、虚数に焦点をあて、その理工学への応用と、量子力学における本質的な役割について紹介する。

 
第41回: 2014 年 11 月 26 日 (水) 18:00~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 小林 健太 氏(一橋大学)
  • 講演題目: 三角形要素上の補間誤差定数について
  • 講演概要: 補間誤差の見積もりは近似理論における興味深い研究対象の一つであり、さらに、有限要素法の誤差評価への応用上も重要である。補間誤差を評価する際には、ある種のノルム不等式に現れる定数をいかに精密に評価するかが重要となる。この定数を補間誤差定数という。
     補間誤差定数については、有限要素法の創成期から様々な上界が求められてきたが、概してその多くはかなりの過大評価であった。しかし最近になって我々は、精度保証付き数値計算を用いて補間誤差定数を精密に評価する方法を開発し、実際にその方法を用いて補間誤差定数をわずかな誤差で上から評価する公式を証明することに成功した。また、この公式がきっかけとなり、有限要素法が収束するためのメッシュ細分化の条件として、今まで知られていた条件よりもより本質的な、外接半径条件と名付けた条件がが発見された。
     講演では、これらの研究結果と今後の課題について説明したい。

 
第40回: 2014 年 10 月 20 日 (月) 18:00~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 齋藤 洋樹 氏(埼玉大学(非常勤研究員))
  • 講演題目: 掛谷問題に対する極大関数を用いたアプローチ
  • 講演概要: 1917年に掛谷宗一は「単位線分を平面上で一回転させるのに必要な最小の面積はいくらか?」という素朴な問題を提出した. 1927年にBesicovitchは「その面積は任意に小さくできる」という驚くべき答えをだした. 一見すると幾何学的な興味にしか見えないが, 1951年にFeffermanは上述に関連する結果をFourier変換のLp収束性の問題に適用した.
     現在掛谷問題と呼ばれるものはいくつかのトピックがある. それらはBochner-Riesz総和法に関する予想, Fourier制限問題に関する予想, Hausdorff次元などの幾何学的次元に関する予想, 極大関数のLp有界性に関する予想などである.いずれも空間の次元に関する難しさをもっており, n=2では解決されているもののn≥3では未解決である.
     本講演では,以上の歴史的背景を概観した後, 自身の研究対象である掛谷極大関数の最新の話題を中心に紹介し, 簡単に他のトピックとの関連性を述べる.

 
第39回: 2014 年 7 月 1 日 (火) 18:10~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 高安 亮紀 氏(早稲田大学・基幹理工学部)
  • 講演題目: 半線形放物型方程式の初期値境界値問題に対する精度保証付き数値計算法
  • 講演概要: 精度保証付き数値計算とは数値計算のすべての誤差を把握して,数学的に正しい結果を数値計算によって得ることをいう.本講演では半線形放物型方程式を考え,数値解の近傍において方程式の厳密な解の存在を計算機援用証明する手法を紹介する.楕円型問題に比べ時間発展方程式に関する精度保証付き数値計算の先行研究は少なく,未解決な問題が山積みの分野である.本手法は空間変数に対する微分作用素が解析半群を生成する場合,分割された時間区間の上で解析半群を用いた不動点形式を定義し,Banachの不動点定理をもとに解の存在と局所一意性を計算機援用証明する.これにより各時間区間ごとに逐次的に解の存在を示すことができる.一例として藤田型方程式(ベキ型非線形項をもつ半線形熱方程式)を考え,空間方向にGalerkin法,時間方向に後退Euler法を用いる初等的な全離散近似スキームを用いた場合の数値結果を通して手法の詳細を説明したい.
 
第38回: 2014 年 6 月 19 日 (木) 18:20~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 山澤 浩司 氏(芝浦工業大学・デザイン工学部)
  • 講演題目: 複素領域におけるある偏微分方程式の形式解の総和法について
  • 講演概要: 複素領域の偏微分方程式論には超局所解析という分野がある。局所解析とは例えば「原点の近傍で考察する。」などである。超局所解析は「原点を頂点とする扇形領域で考察する。」というとても繊細な分野です。今回は形式巾級数により形式解を構成し収束や発散を求める。さらに発散する場合には総和法の理論を使い形式解の意味付けをする。これらのテーマを具体例を使い入門的に話しを進める。また現在研究中のq-差分方程式についても同様の結果を紹介する。
 
第37回: 2014 年 5 月 26 日 (月) 17:00~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 乾 仁 氏(株式会社NTTデータ・フイナンシャル・ソリュショーンズ 先端金融工学センター)
  • 講演題目: マルチレベルモンテカルロ法によるオプションプライシング
  • 講演概要: オプションのプライシングにおいて、よく知られ用いられている手法にモンテカルロ法があります。マルチレベルモンテカルロ法は,モンテカルロ法の一種で,標準的なモンテカルロ法よりも少ない計算コストで同等精度の推定結果を実現するために考案されました。Giles(2008)に端を発し,ファイナンスの世界で応用されて,数多くの研究がなされています。(エイジアン・オプション,デュアルメソッド,...)マルチレベルモンテカルロ法はシミュレーション手法ですが,フレームワークとして機能し既存の標準的なモンテカルロ法に適用可能なので,アメリカン・オプションやゲーム・オプション(Kifer(2000))のプライシングに使用可能です。例えば,アメリカン・オプションを数値的にプライシングする手法にアメリカン・モンテカルロ法があります。このアメリカン・モンテカルロ法に対してマルチレベルモンテカルロ法のフレームワークを適用すると,平均二乗誤差≦O(ε2)の精度を達成するために必要な計算コストは,O(ε-3)からO(ε-2)へと小さくなります。本講演では,マルチレベルモンテカルロ法のロジックと,マルチレベルモンテカルロ法の使用例としてのアメリカン・オプションのプライシングを紹介します。
 
第36回: 2014 年 4 月 21 日 (月) 18:00~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 寒川 光 氏 (早稲田大学)
  • 講演題目: 有理数計算による対称行列の固有値の多重度の解析
  • 講演概要: 高精度な数値計算には,多倍長演算,区間演算のほかに有理数演算が知られている.しかし計算機の計算能力が不足していたため,有理数計算の製品としての実装は少ない.十進BASIC は,10進1000桁モードと有理数モードという高精度計算のモードが用意され,多倍長演算と有理数演算が提供されている.この2つのモードでの計算を比較する.
     有理数演算は多桁整数演算を基礎としているので,単精度,倍精度,4倍精度,8倍精度のように精度を増加させて高精度の追及するアプローチとは異なり,正確な計算が実現される.この演算を用いると,計算機援用証明や数値計算プログラムの開発に必要となる積分係数を求めるような,これまでは数式処理で行うような処理を,数値計算のアプローチで実現できる.浮動小数点演算で行う数値計算では,マシンエプシロン以下の現象を解析することは大変難しい.有理数計算による数値計算は,正確なので,例えばCG法がn回以下の反復で収束するというような,数学教育として最も基本的な知識をプログラムで確かめることもできる.対称行列の固有値問題を例に,固有値の多重度の解析を行い,有理数計算による,浮動小数点計算プログラムの問題解決の例を紹介する.
 
第35回: 2014 年 2 月 26 日 (水) 17:00~18:30
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 段 朝霞(Zhaoxia Duan)氏 (南京理工大学自動化学院D2)
  • 講演題目: 2次元切替えシステムのモデリングと安定解析
    (Modeling and Stability Analysis of Two-Dimensional Switched Systems)
  • 講演概要: 本講演では信号・画像処理や分散と並列計算などの分野で用いられる2次元システムを取り扱う.まず,リヤプノフ関数に基づくシステムの安定性解析手法についてレビューする.そして,2次元システムのモデリングと切替えシステムの考え方を解説する.最後に,2次元切替えシステムの安定性と安定化について問題定式化を行い,リヤプノフ関数に基づく解析結果を紹介する.
    Abstract: This talk deals with two-dimensional systems, which appear frequently in the areas of signal and image processing, distributed and parallel computing, etc. First, the stability analysis approach based on Lyapunov functions is reviewed. Secondly, the modeling of two-dimensional systems and the concept of switched systems are introduced. Finally, after the problem formulation for stability and stabilization of two-dimensional switched systems, some results via the Lyapunov function approach are surveyed.
 
第34回: 2014 年 1 月 28 日 (火) 16:30~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 南畑 淳史 氏(早稲田大学大学院基幹理工学研究科D2)
  • 講演題目: 近似逆行列を用いた連立一次方程式の数値解に対する精度保証付き数値計算法
  • 講演概要: 本講演では連立一次方程式の近似解に対する精度保証付き数値計算法を紹介する。特に近似逆行列を用いた精度保証付き数値計算法について詳しく述べる。近似逆行列を用いた精度保証付き数値計算法は、狭義優対角行列などの正則性が保証しやすい行列の性質を用いて構築される事が多い。本講演ではH行列の性質を用いた精度保証付き数値計算法をいくつか示し、その応用について紹介する。
 
第33回: 2013 年 11 月 11 日 (月) 18:00~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 秋山 正和 氏(北海道大学 電子科学研究所)
  • 講演題目: 平面内細胞極性の数理モデル
  • 講演概要: ショウジョウバエの翅(ハネ)を顕微鏡にて詳細に観察すると,その表面には翅毛(しもう)と呼ばれる細かい毛が翅の根本から先端にむけて整然と並んでいることが知られている.これは,翅を構成する各細胞が細胞内に極性を作り,その非対称性により毛を構成する蛋白が特異的に局在するために起こる現象であるとされている.この様な現象は翅だけでなく,上皮細胞のようなシート構造をつくるような系では普遍的に見られる現象であり,平面内細胞極性(Planar Cell Polarity)と呼ぼれている.
     近年,PCPは分子生物学的な研究が進み,詳細な分子機構がわかりつつある一方,そのようなミクロな情報をいかに統合しマクロな現象であるPCPを理解するかという大きな問題が残されている.
     本研究では,このような問題を解決するために,実験協力者の山崎正和氏(秋田大)等とともに,数理モデルを構築し現象の再現を試みた.その結果,非常に簡単な枠組みの数理モデルであるにもかかわらず,PCP現象の重要な側面を数多く再現することができた.
     本講演では,PCPに関する諸事実や,再現されたシミュレーション結果をわかりやすく解説したい.
 
第32回: 2013 年 10 月 4 日 (金) 17:00~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館3F 5351室
  • 講演者: 牧下 英世 氏 (芝浦工業大学工学部共通学群教職科目)
  • 講演題目: 数学教育実践から数学教員養成を概観する
  • 講演概要: 本学を巣立つ教職学生は、様々な学校の教壇に立ちます。中には、多様化する生徒への対応や部活指導に忙しい学校に着任することもあるでしょう。また、SSH校などの先進的な理数教育を実践する学校の場合もあるでしょう。私は、学生がどの学校にあっても、自分自身が数学を考えることを楽しむことができる教師になってほしいと思います。本講演では、私のこれまでの中学校・高等学校における数学教育実践を通して、本学における数学教員養成について概観したいと思います。
 
第31回: 2013 年 7 月 24 日 (水) 17:00~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 松田 晴英 氏 (芝浦工業大学工学部共通学群数学科目)
  • 講演題目: グラフ理論における因子と木について
  • 講演概要: グラフ理論の研究対象に,「因子」と「次数を制限した木」があります。グラフの因子とは,与えられたグラフのすべての点といくつかの辺からなる部分グラフで,特定の性質をみたすものをいいます。また,次数を制限した木とは,各点に接続する辺の個数を制限した,閉路を含まない部分グラフをいいます。本講演では,この2つの話題について,基礎的研究から先端的研究までを概観する予定です。
 
第30回: 2013 年 6 月 26 日 (水) 18:00~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 友枝 明保 氏 (明治大学 / JST, CREST)
  • 講演題目: 渋滞解消に向けて:発進波の伝播現象から道路の錯視現象まで
  • 講演概要: 渋滞を解消するためには,何を考えれば良いだろうか?例えば,人の行列を考えた場合,行列の後方に加わる人の数を前方から抜けて行く人の数よりも少なくすることができれば,行列を短くすることができる.つまり,渋滞列にゆっくりと近づき(slow-in),渋滞列から素早く抜け出す(fast-out)ことが実現できれば,渋滞を解消できると言える.本講演では,fast-outに注目し,人が行列から動き出す際の発進波の伝播現象について,その特徴を数理モデルと実証実験の双方から明らかにしたので紹介する.さらに,"縦断勾配錯視"と呼ばれる自然渋滞のきっかけを生むサグ部に潜む錯視現象の解消法や,計算によって創作した錯視作品の最近の話題についても時間の限り紹介したい.
 
第29回: 2013 年 5 月 31 日 (金) 16:30~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 村田 美帆 氏 (早稲田大学大学院) 
  • 講演題目: 圧縮性粘性流体に対するStokes作用素のR-有界性について
  • 講演概要: 圧縮性流体の運動を記述した非線形問題の可解性を考察するには,レゾルベント評価と最大正則性の評価の2つが必要になる.この2つを示す手法としてレゾルベント問題の解作用素に対するR-有界性がある.本講演では, 圧縮性流体に対する線形化問題をslip境界条件をかした一般領域で考え,Stokes作用素のR-有界性について得られた結果を述べるとともに,圧縮・非圧縮性流体に対する最大正則性原理やR-有界性について先行研究とその有用性を紹介する.
 
第28回: 2013 年 1 月 21 日 (月) 16:00~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 野津 裕史氏 (早稲田大学高等研究所) 
  • 講演題目: 流れ問題のための特性曲線有限要素および有限差分スキーム
  • 講演概要: 我々が近年開発した流れ問題のための特性曲線有限要素および有限差分スキームを紹介し、その理論的および数値的結果を示す。移流拡散、Oseen、Navier-Stokes 方程式を考える。まず特性曲線法が移流が卓越した問題においても強靭であること、すなわち、流れ場が既知のときには粘性係数に依存せずにスキームが本質的に無条件安定であることを示す。その後、誤差評価を与える。スキームは陰的であるが、特性曲線法の長所である連立一次方程式の係数行列の対称性により簡便に計算を実行することができる。最後に数値計算結果を示し、理論結果の確認およびスキームの有用性を数値的に確認する。

 
第27回: 2012 年 7 月 11 日 (水) 18:00~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館2F 演習室(数理棟5284室)
  • 講演者: 今倉 暁氏 (筑波大学計算科学研究センター) 
  • 講演題目: 大規模線形方程式のための減速定常反復型前処理付きKrylov部分空間法およびその自動チューニング技法
  • 講演概要: 線形方程式は様々な科学技術計算の根幹となる計算であり, 現在でもその高速解法の開発が活発に行われています.近年では, 問題規模の大規模化に伴い, 特に反復法の一種である前処理付きKrylov部分空間法が広く用いられています.最近我々は, 反復法を用いた前処理である減速定常反復型前処理に着目し, そのパラメータを最適化する自動チューニング技法を提案しました.本講演では, 前処理付きKrylov部分空間法の概略について紹介し, 提案した自動チューニング技法について紹介します.

 
第26回: 2012 年 6 月 4 日 (月) 18:00~
  • 場所: 芝浦工業大学大宮キャンパス5号館4F 5441教室
  • 講演者: 愛木 豊彦氏(日本女子大学理学部) 
  • 講演題目: 1次元自由境界問題モデルを用いて得られたコンクリート中性化速度の評価
  • 講演概要: コンクリートの中性化は,土木工学における重要な研究課題であり,この現象を記述するいろいろなモデルが考えられている。近年,我々はBöhmとMunteanによって提唱された1次元自由境界問題モデルを単純化した問題について考察してきた。その結果として,次の二つのことを示すことができた。一つ目は,中性化の深さが時間の平方根に比例するということである。従来,このことは実験測として用いられてきたが,自由境界問題モデルからも,これを保証することができた。二つ目は,初期時刻において,まったく中性化されていないという状態でも,解が存在することである。これは,現象からみれば簡単なことであるが,数学的に証明するのが困難であった。この問題を,自由境界に対する評価を用いて,証明することができた。以上の内容について,モデリングの過程と合わせて,報告する。

 
第25回: 2012 年 5 月 30 日 (水) 18:00~
  • 場所: 芝浦工業大学・大宮校舎 5 号館 (旧・システム工学部棟) 5341 教室
  • 講演者: 菅 徹 氏(東北大学大学院理学研究科・学振PD) 
  • 講演題目: 円環領域における Liouville-Gel'fand 方程式の解の分岐構造
  • 講演概要: 指数関数型非線形項を持つ半線形楕円型方程式であるLiouville-Gel'fand 方程式は,領域の形状に応じて様々な興味深い分岐構造を持つ.本講演では特に2次元の円環領域において方程式を考察し,分岐図式における非球対称解の大域的構造について得られた結果を紹介する.

 
第24回: 2012 年 4 月 25 日 (水) 18:00~
  • 場所: 芝浦工業大学・大宮校舎 5 号館 (旧・システム工学部棟) 5241 教室
  • 講演者: 山中 脩也 氏 (早稲田大学 理工学術院総合研究所) 
  • 講演題目: 高精度で高可搬な精度保証付き高速初等関数計算法の構築
  • 講演概要: 本講演は,高精度・高可搬・高速・精度保証付きという四つの特徴を持つ数値計算法について述べます.講演者は,初等関数や特殊関数の計算について,最近点丸めにおける倍精度浮動小数点数だけを利用して(高可搬),倍精度浮動小数点数の倍の精度を(高精度),既存手法より実行時間を早く(高速),精度保証付きで達成する,計算手法の設計を目指しています.これらが達成されれば,現在使っている計算機環境のまま,わずかなソフトウエアの変更で,従来の倍の精度の結果が 100% 間違える事なく計算できることになります.既にいくつかの初等関数に関してこれらを構築しましたので,その手法についてお話させていただきたいと思います.

 
第23回: 2012 年 2 月 9 日 (木) 17:00~
  • 場所: 芝浦工業大学・大宮校舎 5 号館 (旧・システム工学部棟) 5451 教室
  • 講演者: Florian Bünger 氏 (ハンブルグ工科大学) 
  • 講演題目: A numerical verification method for solutions of non-linear second order Sturmian boundary value problems
  • 講演概要: A numerical method for verifying the existence and uniqueness of solutions of second order non-linear two-point boundary value-problems with Sturmian boundary conditions -u''(x) = f(x,u(x),u'(x)), α < x < β, α1 u(α) +α2 u'(α) = 0 = β1 u(β) +β2 u'(β) in the vicinity of a given approximate numerical solution is proposed, where α,β,α1212 are real numbers satisfying α<β and (α12) ≠ (0,0) ≠ (β12). The function f(x,y,z) is assumed to be continuous on [α,β]×R2 and to be two times continuously differentiable with respect to y and z.

 
第22回: 2012 年 1 月 30 日 (月) 13:00~14:30
  • 場所: 芝浦工業大学・大宮校舎 5 号館 (旧・システム工学部棟) 5242 教室
  • 講演者: 中川 征樹 氏 (香川高等専門学校) 
  • 講演題目: ループ空間のホモロジーについて
  • 講演概要: 位相空間上のループ(閉道)のなす空間は, 有名なセール(Serre)の学位論文(1951年)において導入された「H-空間」の典型的な例として本格的に研究が開始され, 以後, 代数的トポロジーにおける主要な研究対象の一つとなっています. 特に, リー群上のループ空間は, 古典群の安定ホモトピー群に関するBottの周期性定理など, ホモトピー論において重要な役割を果たすとともに, 「アフィン グラスマン多様体」として, 表現論や代数的組合せ論においても活発に研究されています. 講演では, これまでの研究状況を概観した後, リー群上のループ空間のホモロジーに関して講演者が取り組んでいることについてお話したいと思います.
 
第 21 回: 2011 年 10 月 13 日 (木) 18:30 〜
  • 場所: 芝浦工業大学・大宮校舎 5 号館 (旧・システム工学部棟) 5241教室
  • 講演者: 杉原 厚吉 氏 (明治大学)
  • 講演題目: ベスト錯覚コンテスト世界チャンピオンまでの道
  • 講演概要: 絵を理解するコンピュータを作りたいという工学的研究の中で、不可能立体の絵と呼ばれるだまし絵の中に、立体として作れるものがあることを見つけました。さらに、それと同じ原理で、ありえない動きが起こっているという印象を見る人に与える「不可能モーション」錯視も創作しました。その一つ「なんでも吸引4方向すべり台」は、2010年度のBest Illusion of the Year Contest で一位に選ばれました。ここに至るまでの道のりを紹介し、「見る」ことを数理モデルを通して探る研究の楽しさをお伝えしたいと思います。
 
第 20 回: 2011 年 6 月 9 日 (木) 18:15 〜
  • 場所: 芝浦工業大学・大宮校舎 5 号館 (旧・システム工学部棟) 5541教室
  • 講演者: 水藤 寛氏 (岡山大学)
  • 講演題目: 臨床医療と数理科学の協働
  • 講演概要: 講演者のグループが現在CREST研究として進めている臨床医療,特に放射線医学と数理科学の協働について,その目指すところと成果の一部を報告する.臨床医療は経験の蓄積を最重要視する分野であるが,そこに数理科学が関わることにより様々な貢献をする余地がある.そのような例として,造影剤濃度の時系列データを用いた癌転移危険性の評価,大動脈血流シミュレーションによる患者固有の血管形状と大動脈瘤治療の予後の因果関係,などについて紹介したい.
 
第 19 回: 2011 年 5 月 31 日 (火) 18:15 〜 19:15
  • 場所: 芝浦工業大学・大宮校舎 5 号館 (旧・システム工学部棟) 5341教室
  • 講演者: Siegfried M. Rump氏(Hamburg University of Technology)
  • 講演題目: Verification methods: Rigorous results using floating-point arithmetic
  • 講演概要: Numerical algorithms mostly compute a reasonably good approximation to the true result. However, sometimes approximations are afflicted with some error, and in the worst case this happens without an appropriate error message. Recently so-called computer-assisted became popular, where a mathematical problem is solved with the aid of a digital computer. Such methods require mathematically true results. This can be achieved using floating-point arithmetic. In this talk we will introduce verification methods which are fast algorithms to compute rigorous error bounds for the solution of numerical problems in floating-point arithmetic.
 
第 18 回: 2011 年 3 月 9 日 (水) 16:30 〜 18:00
  • 場所: 芝浦工業大学・大宮校舎 5 号館 増築部2階(旧・システム工学部棟) 5282 ゼミ室1
  • 講演者: 垣花 達志 氏 (芝浦工業大学大学院工学研究科)
  • 講演題目: 無限次元非協力ゲームのNash均衡解の力学系を用いた変分解析
  • 講演概要: Nash均衡解はゲーム理論における解の一種で,各プレイヤーが自分の戦略を変更する動機を持たない状態である.近年では戦略集合をHilbert空間の部分集合とした場合についての研究が多く行われており,その成果の1つとしてNash均衡解を近似した概念である変分均衡解がある.この変分均衡解を求める方法として,発展方程式の解の極限集合が変分均衡解になることが知られている.本発表では,ゲーム理論に由来する非線形発展方程式の初期値問題の弱解の存在と強解の一意性を示す.
  • 講演者: 赤木 剛朗 氏 (芝浦工業大学システム理工学部)
  • 講演題目: 研究活動報告 2006-2010
  • 講演概要: 講演者が 2006 年 4 月に芝浦工業大学に着任して以来,今日まで取り組んできた研究活動の概要について報告する.はじめに講演者の経歴や研究に対する動機など研究活動の背景について簡単に説明し,その後,時系列に沿って取り扱った問題と得られた結果の概要,および,興味を持った点などについて,当時の経緯をはさみながら報告させていただきたい.
  • 本談話会は垣花氏(16:30〜16:55),赤木氏(17:00〜18:00)を予定しております.
 
第 17 回: 2011 年 2 月 24 日 (木) 16:00 〜
  • 場所: 芝浦工業大学・大宮校舎 5 号館 (旧・システム工学部棟) 374 教室
  • 講演者: 八木 秀樹 氏 (電気通信大学)
  • 講演題目: 多重アクセス通信における低計算量で情報論的限界を達成する符号化
  • 講演概要: 多重アクセス通信路はマルチユーザ情報理論における最もシンプルで, かつ重要な通信システムのモデルである. 本発表では, 多重アクセス通信路における符号化を題材に, 情報量, 通信レートの理論限界(キャパシティ), 及びその限界を達成する符号化について述べる. 特に注目するべき符号化法として, シングルユーザ通信における符号化の仕組みを逐次的に用いることにより, 多重アクセス通信路のキャパシティを低計算量で達成するレート分割法が挙げられる. 本発表では, 従来の情報理論的結果とレート分割法について簡単に解説した後, 講演者が近年行っている複合多重アクセス通信路におけるレート分割法の開発についてお話しする.
 
第 16 回: 2010 年 12 月 22 日 (水) 16:30 〜
  • 場所: 芝浦工業大学・大宮校舎 5 号館 (旧・システム工学部棟) 274 教室
  • 講演者: 境 圭一氏 (信州大学)
  • 講演題目: 埋め込みのなす空間のコホモロジーについて
  • 講演概要: 与えられた位相空間の間の写像全体のなす空間は, 通常の多様体などとは異なる無限次元的な対象で, ホモトピー論における主要な研究テーマの一つです. その中でも, 多様体の埋め込み全体のなす空間は, 多様体のトポロジーや結び目の分類など, 様々な幾何学との関わりを持ちます. 講演では, 過去から現在に至る研究の状況を概観した上で, 埋め込みのなす空間のコホモロジーに関して講演者が考えたことについてお話したいと思います.
 
第 15 回: 2010 年 12 月 7 日 (火) 18:15 〜
  • 場所: 芝浦工業大学・大宮校舎 5 号館 (旧・システム工学部棟) 241 教室
  • 講演者: 上田 よしすけ 氏 (早稲田大学/京都大学名誉教授)
  • 講演題目: カオス研究の原点“割れた卵現象”からほぼ半世紀間の四方山話
  • 講演概要: 現実世界に生起しているカオス現象を初めて観測し記録した者は講演者である, と多くの研究者が認知して下さってから数十年が経過した. 記録されたデータの形状はギザギザのある割れた卵形であった. 実験は同期現象を記述した2階非線形常微分方程式のアナログ計算機シミュレーションで, 記録紙に残されていた日付は 1961.11.27 だった. 筆者の使っていたアナログ計算機は3年先輩の安陪稔氏の研究開発による貴重な研究成果(京都大学工学部電気工学科, 林千博研究室の戦略財産・機器)であった. 安陪氏の造ったアナログ計算機は真空管を用いたもので, 変数の動作範囲は (-100V, +100V) であった. 割れた卵形のアトラクタは同期が達成されない場合に生じる, 唸り振動の一形態で, 当時の常識では概周期(準周期)振動と看做されていた. この解釈に疑義を感じていた筆者に, 山積する実験データは「非線形系に現れる定常状態とは?」の問題意識をすり込んでくれた. 数年後に筆者は当該現象を「不規則遷移振動」と呼んでいた. 本講演では, 関連する学術的解説のみならず研究者間の実態を語らせて戴きたい. 興味と時間的余裕をお持ちの方には下記の資料を予め眺めておいて頂ければ幸いです.

    - http://hdl.handle.net/2433/71101 本URLの第7章
    - http://www.purple.dti.ne.jp/kambe/D-Originality.pdf 東大神部勉名誉教授による物理学会誌(2006.03)への寄稿記事 (2005度は物理年)
    - 拙著:カオス現象論, コロナ社, 2008.03
 
第 14 回: 2010 年 11 月 10 日 (水) 18:15 〜
  • 場所: 芝浦工業大学・大宮校舎 5 号館 (旧・システム工学部棟) 341 教室
  • 講演者: 大石 進一 氏 (早稲田大学・基幹理工学部)
  • 講演題目: 精度保証付き数値計算の基礎・無誤差変換・計算機援用証明
  • 講演概要: 現代数値計算の重要な要素はポータビリティと最適化である. 最適化は例えば数値線形代数のアルゴリズムを現代計算機で高速に実行するにはどうするかという技術である. 一方, 計算機には多様な種類(現代ではマルチコアなどの並列計算もパソコンで行えるようになっている)があり, プログラムをいちいち最適化するのには大変であるので, どんなコンピュータでも最適化しやすくプログラムを書くことが必要である. これを実現するのがポータビリティの技術である. 精度保証付き数値計算の基礎となる区間演算などの実装をポータブルに行いかつ最適化された数値計算ライブラリが精度保証付き計算でも利用できることが大変重要となる. ここでは, 浮動小数点数の加減乗算のエラーが厳密に計算できることを利用した無誤差変換のアイディアを紹介し, ポータブルに最適化された精度保証アルゴリズムを構築する試みについて紹介する.
    また, それらのソフトウエアをもとにして非線形偏微分方程式の解の存在の数値的検証を行うなど, 精度保証付き数値計算の数学等での応用の先端を紹介する.
 
第 13 回: 2010 年 10 月 26 日 (火) 18:15 〜
  • 場所: 芝浦工業大学・大宮校舎 5 号館 (旧・システム工学部棟) 341 教室
  • 講演者: 小泉 大城 氏 (サイバー大学・IT 総合学部)
  • 講演題目: 非定常ポアソン過程を用いたネットワークトラヒック解析について
  • 講演概要: ネットワークトラヒック解析における研究対象の確率モデルのひとつに, 非定常 ポアソン過程を用いたものがある. 従来はある種の非定常パラメータモデルを仮 定し, トラヒックを観測したもとで, そのパラメータ推定法を扱った研究が存在 したが, モデル化に用いるパラメータ数が多く, 推定にかかる計算コストも多い という問題があった.
    そこで本講演では, まず単一のハイパーパラメータによって, 定常パラメータモ デルの一般化として定義されるような, ある非定常パラメータモデルを定義す る. 次にこの非定常パラメータモデルによって定義される非定常ポアソン過程を 扱い, その上で予測問題やパラメータ推定問題を, 統計的決定理論の観点からの 定式化について紹介する.
    このアプローチの特色のひとつは, ハイパーパラメータが既知の条件下で, パラ メータの事後分布, およびベイズ基準のもとで最適なトラヒック予測が算術計算 のみで可能になる点にある. 次に, このハイパーパラメータを未知と仮定した場 合の推定法として, 数値計算を用いた近似最尤推定法について紹介する.
    最後に, 上記で取り上げた非定常ポアソン過程による解析モデルのネットワーク トラヒック解析への応用を想定し, その性能評価を行った検討結果を紹介する.
 
第 12 回: 2010 年 10 月 12 日 (火) 18:15 〜
  • 場所: 芝浦工業大学・大宮校舎 5 号館 (旧・システム工学部棟) 241 教室
  • 講演者: 福田 亜希子 氏 (東京理科大学大学院・理学研究科数理情報科学専攻)
  • 講演題目: 可積分系と固有値計算アルゴリズム
  • 講演概要: 1990年代以降, 漸化式で表されるいくつかの優れた数値計算アルゴリズムが可積分系の構造を持つことが明らかとなってきた. 本講演では, ハングリー系と呼ばれる離散可積分系の数理構造を利用して, 近年我々が新しく定式化した固有値計算アルゴリズムについて詳しく解説する.
 
第 11 回: 2010 年 9 月 30 日 (木) 18:15 〜
  • 場所: 芝浦工業大学・大宮校舎 5 号館 (旧・システム工学部棟) 241 教室
  • 講演者: 藪野 浩司 氏 (慶應義塾大学・理工学部機械工学科)
  • 講演題目: 非線形性の発現と操作による機械システムの制御
  • 講演概要: 鉄道車両, ロボットマニピュレータ, 原子間力顕微鏡 (AFM) を例として取り上げ, 機械システムにもともと存在する非線形性の積極的な利用や操作により, これまでにない高性能な機械システムを実現できることを, 非線形解析と実験結果 (ビデオ) をつかって紹介する.
 
第 10 回: 2010 年 7 月 7 日 (水) 18:15 〜
  • 場所: 芝浦工業大学・大宮校舎 5 号館 (旧・システム工学部棟) 241 教室
  • 講演者: 石渡 通徳 氏(福島大学・共生システム理工学類)
  • 講演題目: 勾配系における擬進行波解の存在とその周辺
  • 講演概要: 半線形熱方程式を代表例とする勾配系において, 時間大域解は多くの場合定常解に近づくことが知られている. 1本講演では非自明な定常解が(領域の非有界性のため)存在しない場合, 一種の進行波解(ソリトン)が生じることを紹介する. この解は通常の進行波解とは違うメカニズムで生成されるものであるが, 講演ではこのメカニズムとその周辺事項を解説する.
 
第 9 回: 2010 年 6 月 7 日 (月) 18:00 〜
  • 場所: 芝浦工業大学・大宮校舎 5 号館 (旧・システム工学部棟) 374 教室
  • 講演者: 佐治 健太郎 氏(岐阜大学教育学部)
  • 講演題目: 連続関数のグラフになる波面
  • 講演概要: G. ウルフは図形から結晶の形を構成する幾何学的な方法を与えた. この方法を使うためにはその図形が連続関数のグラフとして与えられている必要がある. 微分可能なパラメーター表示で与えられた曲面の結晶を作ることを考えると曲面に特異点と呼ばれる退化した点がなければいつでも局所的に連続関数のグラフで与えられることはわかる. しかし特異点がある場合はそうはいかない. 本講演では波面と呼ばれる曲面のクラスに的をしぼり, 特異点の近傍で連続関数のグラフとして与えられるための条件を調べる.
 
第 8 回: 2010 年 5 月 14 日 (金) 18:00 〜
  • 場所: 芝浦工業大学・大宮校舎 5 号館 (旧・システム工学部棟) 374 教室
  • 講演者: 中野 直人 氏(芝浦工業大学工学部)
  • 講演題目: 応力テンソルに密度勾配依存項を含む連続体モデルとその数学解析
  • 講演概要: ここでは密度勾配に依存する応力テンソルを持つ連続体モデルについて考察する. この応力は, その連続体の構成物の不均一さが運動に影響を及ぼすことを表現する為に用いられた. 例えば, 組成が一様でないような物体を(多種混合ではなく)一種の連続体として捉えるときや, 粒状物質を粒子と間隙をまとめて連続体として扱うときがそれに当たる. この密度勾配依存性により, 定常単純剪断流でも垂直応力差が生じる為, そのモデルの解が表わす流れは一般の流体のそれとは性質を異にすることがわかっている. なぜ密度勾配に着目するか等の話を織り交ぜながら, これまで得られた数学解析について紹介する. また, このモデルは元来粉粒体流のために提起されたものだが, このモデルの適用可能性と不可能性についても触れたい.
 
第 7 回: 2010 年 1 月 12 日 (火) 18:00 〜
  • 場所: 芝浦工業大学・大宮校舎 5 号館 (旧・システム工学部棟) 274 教室
  • 講演者: 木村 元 氏(産業技術総合研究所)
  • 講演題目: 一般確率論上の情報理論と量子力学の原理
  • 講演概要: 確率を操作論的に最も一般的に扱う枠組みとして一般確率論(General Probabilistic Theories)がある. 数学的には, 局所凸位相ベクトル空間上の(コンパクト)凸集合として状態空間を扱い, 凸結合演算を状態の”確率混合準備”として解釈する. そのため, 単体を形成する古典確率論(Kolmogorovの確率論)の状態空間(確率測度の集合), 密度作用素(Hilbert空間上の単位トレースを持つ正作用素)による量子状態空間を含み, 古典, 量子論を確率論の特殊なケースとしてとらえて, 理論の外側から量子論の本質に迫ることを可能とする.
    近年, 量子情報理論の発展に呼応するように, 一般確率論を土台とした情報理論の構築の試みが世界的に始まっている. これには, 情報理論の言葉を用いた量子力学の原理(公理)探求や, 様々な情報処理間の論理的なつながりを理解する狙いがある. 本セミナーでは, 一般確率論のレビューと情報処理への応用, また量子力学の原理探求について概観する.
  • 参考文献: 数理科学2009年12月号 特集「《原理》の探求」-- 深遠なる物理法則の源に迫る -- 『量子力学の原理を求めて』 木村元
 
第 6 回: 2009 年 12 月 15 日 (火) 18:00 〜
  • 場所: 芝浦工業大学・大宮校舎 5 号館 (旧・システム工学部棟) 374 教室
  • 講演者: 矢崎 成俊 氏(宮崎大学工学部)
  • 講演題目: 時間に依存した隙間を持つセル中のHele-Shaw流れの数値シミュレーションについて
  • 講演概要: 狭い隙間をもつ2平行板の実験装置をHele-Shawセルと呼ぶ. このセルの中に粘性流体を注入して, 平行板の一方を持ち上げる. すると流体領域の境界がアメーバ状の起伏多い形状となる. 表面張力が小さければ, この起伏は激しい. 本講演では, ナビエストークス方程式から帰着される問題の設定と, その数値計算方法について言及する. 数値計算では, 閉折れ線の追跡法において, 接線速度を利用した数値安定化を計っている. この方法と境界要素法を組み合わせた方法を紹介する.
 
第 5 回: 2009 年 11 月 25 日 (水) 18:00 〜
  • 場所: 芝浦工業大学・大宮校舎 5 号館 (旧・システム工学部棟) 374 教室
  • 講演者: 長山 雅晴 氏 (金沢大学理工研究域数物科学系, JSTさきがけ研究員)
  • 講演題目: 表皮細胞間におけるカルシウムイオン伝播の数理モデル
    − 角層再生モデルの構成に向けて −
  • 講演概要: 皮膚の一番外側にある角層は生命機能を維持するための水分保持機能やその恒常維持機能を持っており, 角層が破壊されると角層は急速に回復することが知られている. 傳田氏(資生堂)の研究から, 角層の恒常維持や早期回復機構には表皮細胞におけるカルシウムイオンが重要な役割を担っていることがわかった. そこで表皮細胞におけるカルシウムイオンをキーワードにして角層再生の数理的考察を行うことにした. その第1歩として生体表皮細胞間のカルシウムイオン伝播の数理モデルを考える. 最初に, 培養表皮細胞系に対する機械刺激実験によって生じるカルシウムイオン波の伝播形態に対応する数理モデルを構成し, 次に, 生体系の表皮細胞におけるカルシウムイオン伝播モデルの構成する. 講演では数理モデルの構成について詳しく話す予定である.
 
第 4 回: 2009 年 10 月 2 日 (金) 18:00 〜
  • 場所: 芝浦工業大学・大宮校舎 5 号館 (旧・システム工学部棟) 374 教室
  • 講演者: 西成 活裕 氏 (東京大学大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻)
  • 講演題目: 渋滞の数理
  • 講演概要: 車や人を粒子とみなすと, それらは自分自身で動くことのできる自己駆動型の粒子である. こうした粒子が集団になると渋滞が発生する. 渋滞は車や人だけでなく, インターネット, 物流, そして我々の体内でも起こっている. こうした渋滞がなぜ起こるのかを新しい数理物理的アプローチで研究する渋滞学を紹介する. 講演では研究の手法やこれまでに得られた知見を理論と実験とを交えてわかりやすく示す.
 
第 3 回: 2009 年 7 月 3 日 (金) 17:00 〜
  • 場所: 大宮校舎 5 号館 (旧・システム工学部棟) 341 教室
  • 講演者: 高橋 大輔 氏 (早稲田大学 基幹理工学部 応用数理学科)
  • 講演題目: 超離散化で理解するデジタル系
  • 講演概要: 現象の数理モデルを表現する手段として, 連続変数を用いる微分方程式, 座標を離散化した差分方程式, セルオートマトンに代表される全変数離散のデジタル系などさまざまなものがある.  これら離散性の異なる数理モデル同士を直接的に結びつける手法として超離散化が開発された. この手法により, 系の離散性の違いを超えて解構造を共通の基盤の上で理解することが可能となり, 特にデジタル系を解析学的な見地から把握することに成功した. このような特徴を持つ超離散化について, 基礎から応用までを具体例を豊富に挙げながら解説する予定である.
 
第 2 回: 2009 年 6 月 3 日 (水) 18:00 〜
  • 場所: 大宮校舎 5 号館 (旧・システム工学部棟) 342 教室
  • 講演者: 木田 祐司 氏 (立教大学 理学部 数学科)
  • 講演題目: コンピュータによる素因数分解
  • 講演概要: 整数の素因数分解は中学生でも理解できる基本的な問題である. 単純には小さな数から順に割ってみることが考えられる. 現在では理論的に非常に高度な方法へと発展している. 発展を促したことの一つに素因数分解の難しさがRSA暗号のよりどころになっていることが挙げられる. こういう応用があるために大きな数を素因数分解することの競争が行われて来た. こういう理論から現実的な計算までを概観したい.
 
第 1 回: 2009 年 5 月 8 日 (金) 16:30 〜
  • 場所: 大宮校舎 5 号館 (旧・システム工学部棟) 274 教室
  • 講演者: 山本 野人 氏 (電気通信大学 情報工学科 計算科学講座)
  • 講演題目: 微分方程式に対する精度保証付き数値計算
  • 講演概要: 本講演では, 精度保証付き数値計算について概観したあと, 常微分方程式・偏微分方程式への適用について解説する. 次に, その応用として講演者が現在扱っている問題を述べ, 数値結果を示しながら説明を行う.